「本通知の到達後7日以内にご連絡ください」——こういう文章を受け取ったとき、あなたはいつまでに返事をすればいいと考えるでしょうか。
通知が届いたのが7月10日だとして、「7月16日まで」と考えた人と「7月17日まで」と考えた人に分かれるはずです。この1日のズレは感覚の問題ではなく、法律にはっきりした答えがあります。
原則は「初日を数えない」
期間の数え方は民法が定めています。第140条にはこう書かれています。
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
つまり、期間を数えるときは最初の日(初日)を1日目に含めないのが原則です。これを「初日不算入(しょにちふさんにゅう)」と呼びます。
先ほどの例に当てはめてみましょう。
- 通知が届いた日:7月10日 → 数えない
- 1日目:7月11日
- 2日目:7月12日
- (中略)
- 7日目:7月17日
よって答えは「7月17日まで」です。直感的に出やすい「7月16日」は1日早い計算になります。
なぜ初日を数えないのか
理由はシンプルで、初日は丸1日ないことがほとんどだからです。
通知が7月10日の午後3時に届いたなら、その日に残っているのは9時間だけです。これを「1日」として数えてしまうと、受け取った時刻によって実際に使える時間が変わってしまい、不公平が生じます。そこで最初の半端な1日は切り捨て、翌日から丸1日ずつ数えるという整理になっています。
条文にある「その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない」という但し書きも同じ発想です。ちょうど0時ちょうどから始まるなら初日も丸1日あるので、その日から数えて問題ないというわけです。
期間が終わるのは「末日の終了時」
数え終わりについては、民法第141条が定めています。
前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
「7月17日まで」という場合、7月17日の24時(深夜0時)までが期限です。17日の日中に間に合わなかったからといって、その日のうちならまだ期限内ということになります。
末日が休日だったら
さらに民法第142条には、末日が休日だった場合の特例があります。
期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
注目したいのは「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」という条件がついていることです。休日なら自動的に翌日にずれるわけではなく、その種類の取引が休日には行われない慣習があるときだけ、翌営業日まで延びます。
銀行振込や役所への届出のように、休日には物理的に手続きができないものが典型例です。逆にメールでの連絡のように休日でも可能なものは、そのまま休日が期限になり得ます。
契約書に数え方が書いてあるときは
民法の期間計算のルールは当事者の合意で変更できます。契約書に独自の数え方が定められていれば、そちらが民法の原則より優先されます。
ただし気をつけたいのが、「起算日」という言葉だけでは初日を数えるかどうかは決まらないということです。「起算日」は「期間を数え始める基準になる日」を指すだけで、その日自体を1日目に含めるかまでは表していません。初日不算入の原則にしたがって「翌日が起算日になる」という使われ方もします。
一方、法令で「〜の日から起算して」という形が使われている場合は、初日を算入する意味になるのが通例です。初日不算入という原則の例外であることを明示するための言い回しだからです。逆に単に「〜の日から」とだけ書かれていれば、原則どおり初日は算入しません。
とはいえ契約書は法令ではないため、この使い分けが徹底されているとは限りません。迷いなく判断できるのは、次のように初日の扱いまで書かれている場合です。
- 「契約日を含めて30日以内」→ 契約日が1日目
- 「契約日の翌日から30日以内」→ 翌日が1日目
そのため、期限を確認するときの順番はこうなります。
- まず契約書・約款に数え方の定めがないか探す
- 初日を含むかどうかまで明記されていれば、その通りに数える
- 「起算日」のように初日の扱いが曖昧な表現しかなければ、民法の原則(初日不算入)で数えたうえで、重要な期限であれば相手方に確認する
「〇日以内」という文言だけで判断せず、必ず前後の条項を確認してください。
よくある間違い
「〇日後」と「〇日以内」を同じだと思ってしまう
「10日後」と「10日以内」は、期限の日そのものは同じでも意味が違います。「10日後」は特定の1日を指し、「10日以内」はその日までの幅を持った期間を指します。書類の提出期限であれば「以内」、実施日の指定であれば「後」が使われるのが一般的です。
カレンダーの日数と営業日を混同する
民法の期間計算は、土日祝も1日として数える**暦日(れきじつ)**が基本です。「7営業日以内」と書かれている場合だけが営業日ベースであり、単に「7日以内」なら土日祝も含めて数えます。
営業日ベースの期限を確認したいときは、土日と祝日を自動的に除外して計算できるぱぱっと営業日計算が便利です。
まとめ
- 期間の数え方の原則は初日不算入(民法140条)。最初の日は1日目に数えない
- 期間が終わるのは末日の終了時、つまりその日の24時(民法141条)
- 末日が休日でも自動的にずれるわけではなく、その取引に休日の慣習がある場合に限り翌日に満了する(民法142条)
- 契約書の定めは民法より優先されるが、「起算日」の一語だけでは初日を含むかは決まらない。「含めて」「翌日から」まで書かれているかを確認する
- 「〇日以内」は原則として暦日。営業日ベースとは別物
日数の計算そのものはぱぱっと日数計算で確認できます。このツールも初日不算入の考え方(起算日を数えない)で計算しています。
なお、この記事は民法の原則を一般的に整理したものです。個別の契約や手続きの期限判断については、内容によって扱いが異なる場合がありますので、重要な期限は契約書の条項をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。