訪問販売で契約してしまったとき、一定期間内なら無条件で申込みを撤回できる——クーリング・オフはよく知られた制度です。
ただ、いざ使おうとすると迷うのが期限の数え方です。「8日以内」の8日は、書面を受け取った日を1日目として数えるのでしょうか。それとも翌日からでしょうか。
この違いで期限が1日ずれます。そして条文には、はっきりと答えが書かれています。
条文は「受領した日から起算して8日」
訪問販売のクーリング・オフを定めているのは、特定商取引に関する法律(特商法)の第9条です。
……申込者等は、書面又は電磁的記録によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除……を行うことができる。ただし、申込者等が第五条第一項又は第二項の書面を受領した日……から起算して八日を経過した場合……においては、この限りでない。
注目したいのは「起算して」という部分です。
法令で「〜の日から起算して」と書かれている場合、それは初日を1日目に含めるという意味になります。つまり書面を受け取ったその日が1日目です。
民法の原則とは逆になっている
ここが少しややこしいところです。期間の数え方について、民法140条は初日を数えない(初日不算入)という原則を定めています。契約書の「〇日以内」は、通常この原則で数えます。
ところがクーリング・オフは、その原則の例外にあたります。特商法がわざわざ「起算して」と書くことで、初日を含める扱いにしているためです。
初日不算入の原則と、「〜から起算して」という言い回しの意味については「初日不算入」とは?契約書の「〇日以内」の正しい数え方で詳しく解説しています。この記事で説明した法令用語のルールが、そのまま当てはまる実例がクーリング・オフというわけです。
具体的に数えてみる
2026年8月6日に法定書面を受け取ったとして数えてみます。
| 日数 | 日付 |
|---|---|
| 1日目 | 8月6日(受領日) |
| 2日目 | 8月7日 |
| ⋮ | ⋮ |
| 8日目 | 8月13日 |
条文は「8日を経過した場合」は撤回できないと定めているので、8月13日までは手続きが可能ということになります。
ここで注意したいのは、初日を数えるぶん期限が1日早くなるという点です。
民法の原則(初日不算入)で数えると8月7日が1日目となり、8日目は8月14日になります。しかしクーリング・オフはそうではなく、8月13日で締め切られます。
わずか1日の差ですが、期限ぎりぎりで動く場面では取り返しがつきません。「受け取った日が1日目」と覚えて、早めに手続きするのが安全です。
取引の種類によって日数が違う
クーリング・オフの期間は取引の類型ごとに定められており、すべてが8日というわけではありません。
| 取引の種類 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 訪問販売 | 8日 | 特商法9条 |
| 電話勧誘販売 | 8日 | 特商法24条 |
| 連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法) | 20日 | 特商法40条 |
連鎖販売取引が長いのは、契約の内容を理解するまでに時間がかかることが想定されているためと考えられます。
通信販売には「クーリング・オフ」がない
意外に思われるかもしれませんが、通信販売にはクーリング・オフ制度がありません。自分から申し込む取引であり、不意打ち的な勧誘がないためです。
その代わりに特商法15条の3が定めているのが返品制度です。
……商品の引渡し……を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除……を行うことができる。
ただしこちらには重要な条件があります。販売業者が広告に返品の特約を表示していれば、そちらが優先されるという点です。「返品不可」と明示されている通販サイトで返品ができないのは、この仕組みによります。
数え方(初日を含めて8日)は同じですが、制度としては別物なので混同しないよう注意してください。
期限をツールで計算するときの読み替え
このサイトのぱぱっと日数計算は、民法の原則にあわせて開始日を数えない方式で計算します。
そのためクーリング・オフの期限を求めるときは、次のように読み替えてください。
| やりたいこと | ツールでの計算 |
|---|---|
| 受領日を1日目として8日目を知りたい | 受領日の7日後を計算する |
| 受領日を1日目として20日目を知りたい | 受領日の19日後を計算する |
「初日を含めるならマイナス1日」と覚えておけば、他の法令の期限にも応用できます。
手続き自体は書面でも電磁的記録でもよい
条文をもう一度見ると、「書面又は電磁的記録により」と書かれています。
以前は書面(はがきなど)に限られていましたが、法改正により電磁的記録——電子メールやウェブサイトの専用フォームなど——でも手続きができるようになっています。
いずれの方法でも、期限内に発信したことを証明できる形を残しておくことが大切です。
まとめ
- クーリング・オフの期間は「書面を受領した日から起算して8日」(特商法9条)。「起算して」は初日を1日目に含めるという意味
- 民法の原則(初日不算入)とは逆の扱いになっている例外
- 8月6日に受領したなら8月13日まで手続きができる
- 期間は取引の種類で異なり、連鎖販売取引は20日
- 通信販売にはクーリング・オフがなく、返品制度(特商法15条の3)が適用される。ただし広告の返品特約が優先される
- 手続きは書面でも電磁的記録でもよい
日付の計算はぱぱっと日数計算でできます。このツールは開始日を数えない方式のため、初日を含めて数える場合は1日引いた日数で計算してください。
なお、この記事は特定商取引法の規定を一般的に整理したものです。実際に適用されるかどうかは契約の内容・取引の形態によって異なり、期間が延長される場合(事業者が不実告知をした場合など)もあります。具体的なトラブルについては、お住まいの自治体の消費生活センターや専門家にご相談ください。