「あなたの干支(えと)は?」と聞かれたら、子・丑・寅……のうちのどれかを答えるはずです。
ただ、これは本来の「干支」を略した使い方です。干支という言葉が本来指しているのは、60通りの組み合わせのほうで、私たちがふだん干支と呼んでいる12種類は、そのうちの片方にあたります。
「干支」は十干と十二支の組み合わせ
干支の「干」は十干(じっかん)、「支」は**十二支(じゅうにし)**を指します。2つを合わせた言葉が干支です。
十干(10種類)
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
十二支(12種類)
子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥
この2つを頭から順に組み合わせていくと、甲子・乙丑・丙寅……と進みます。10と12の最小公倍数は60なので、60通りで一巡して甲子に戻ります。これを六十干支(ろくじっかんし)と呼びます。
十干と十二支は別々に進む
ここで少しわかりにくいのが、組み合わせ方です。
十干と十二支は、総当たりで組み合わせるのではありません。それぞれが独立したカウンターとして、毎年1つずつ進むという仕組みです。歯数10の歯車と歯数12の歯車が噛み合って、同時に回っているとイメージするとつかみやすくなります。
最初の14年を並べてみます。
| 年目 | 十干 | 十二支 | 干支 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1番 甲 | 1番 子 | 甲子 |
| 2 | 2番 乙 | 2番 丑 | 乙丑 |
| 3 | 3番 丙 | 3番 寅 | 丙寅 |
| ⋮ | ⋮ | ⋮ | ⋮ |
| 10 | 10番 癸 | 10番 酉 | 癸酉 |
| 11 | 1番 甲(一周して先頭に戻る) | 11番 戌 | 甲戌 |
| 12 | 2番 乙 | 12番 亥 | 乙亥 |
| 13 | 3番 丙 | 1番 子(ここで一周) | 丙子 |
| 14 | 4番 丁 | 2番 丑 | 丁丑 |
10年目までは番号がそろって進みますが、11年目に十干だけが先に一周します。ここでズレが生まれ、以降は違う組み合わせが続いていきます。
そして元の甲子に戻るのは、十干がちょうど何周かして、かつ十二支もちょうど何周かした年——つまり10でも12でも割り切れる年数です。それが最小公倍数の60で、十干は6周・十二支は5周したところで、組み合わせとしては1周するという関係になっています。
組み合わせは120通りではなく60通り
ここでひとつ、意外な結論が出てきます。
十干10種類と十二支12種類なら、単純な掛け算では10×12=120通りあるはずです。ところが実際に現れるのは60通りしかありません。
つまり残りの60通りは、この世に一度も現れない組み合わせということになります。たとえば「甲丑」「乙子」といった並びは、干支としては存在しません。
理由は番号の並び方にあります。10も12も偶数なので、何周してもこの関係が崩れません。
- 奇数年目は、十干も十二支も奇数番目どうしが組む
- 偶数年目は、十干も十二支も偶数番目どうしが組む
甲は1番目(奇数)なので、組む相手は奇数番目の十二支だけです。実際、甲がつく干支は次の6つしかありません。
| 十干 | 組み合わせが存在する干支 |
|---|---|
| 甲(1番) | 甲子・甲寅・甲辰・甲午・甲申・甲戌(すべて奇数番目の支) |
| 乙(2番) | 乙丑・乙卯・乙巳・乙未・乙酉・乙亥(すべて偶数番目の支) |
どの十干も相手は6つずつで、6×10=60通り。これが六十干支の中身です。
「丑年の甲さん」のような組み合わせは作れない——十干と十二支がそれぞれ独立に進むからこそ生まれる制約です。
60年で一巡するから「還暦」
年に干支を割り当てると、60年で生まれた年と同じ干支に戻ります。暦が還るので還暦です。満60歳を祝う習慣は、この一巡から来ています。
たとえば2026年の干支は**丙午(ひのえうま)**です。前回の丙午は60年前の1966年、次は2086年になります。「丙午」のように十干と十二支をセットで言うのが本来の干支の使い方で、「午年」はそのうち十二支だけを取り出した言い方ということになります。
十干は五行からできている
十二支に比べると、十干はあまり馴染みがないかもしれません。ただ、その読み方を見ると成り立ちがはっきりわかります。
| 漢字 | 読み | 意味 | 音読み |
|---|---|---|---|
| 甲 | きのえ | 木の兄 | コウ/カッ |
| 乙 | きのと | 木の弟 | イツ/オツ |
| 丙 | ひのえ | 火の兄 | ヘイ |
| 丁 | ひのと | 火の弟 | テイ |
| 戊 | つちのえ | 土の兄 | ボ |
| 己 | つちのと | 土の弟 | キ |
| 庚 | かのえ | 金の兄 | コウ |
| 辛 | かのと | 金の弟 | シン |
| 壬 | みずのえ | 水の兄 | ジン |
| 癸 | みずのと | 水の弟 | キ |
読みの部分に注目すると、木・火・土・金・水が2つずつ並んでいます。これは古代中国の五行説(万物を5つの要素で捉える考え方)にもとづくもので、5つの要素それぞれに「兄(え)」と「弟(と)」を割り当てて、5×2=10種類になっています。
つまり十干は、ばらばらの10文字ではなく5つの要素を2つずつに分けた体系です。丙午(ひのえうま)は「火の兄」の年、乙巳(きのとみ)は「木の弟」の年、という読み方になります。
「えと」という読み方の由来
ここで気づくのが、**「え」と「と」**が繰り返し出てくることです。
「干支」を「えと」と読むのは、この**兄(え)・弟(と)**から来ているとされます。本来は音読みで「かんし」と読む言葉ですが、十干の訓読みに現れる「え」「と」が日本語の呼び名として定着したという説明です。
十二支だけを指して「えと」と呼ぶ現在の使い方からすると意外ですが、「えと」という言葉そのものは、むしろ十干のほうから来ていることになります。
契約書の「甲」「乙」も十干
十干は10個が順番に並んだものなので、順序や等級を表す記号としても古くから使われてきました。これが現代にも残っています。
- 契約書の当事者:「甲は乙に対して……」の甲・乙は、1番目・2番目という意味の十干
- 成績や等級:「甲・乙・丙」の3段階評価
- 資格の区分:危険物取扱者の甲種・乙種・丙種など
アルファベットのA・B・Cにあたる記号として使われている、と考えるとわかりやすいかもしれません。日常生活では、十二支より十干のほうを目にしている場面も多いわけです。
十二支の順番と読み方
十二支の正式な漢字は、動物を表す漢字とは別のものが使われます。
| 順 | 漢字 | 読み | 動物 |
|---|---|---|---|
| 1 | 子 | ね | ねずみ |
| 2 | 丑 | うし | うし |
| 3 | 寅 | とら | とら |
| 4 | 卯 | う | うさぎ |
| 5 | 辰 | たつ | 竜 |
| 6 | 巳 | み | へび |
| 7 | 午 | うま | うま |
| 8 | 未 | ひつじ | ひつじ |
| 9 | 申 | さる | さる |
| 10 | 酉 | とり | にわとり |
| 11 | 戌 | いぬ | いぬ |
| 12 | 亥 | い | いのしし |
十二支はもともと順序を表す記号として使われていたもので、動物とは無関係でした。動物が結び付けられたのは、覚えやすくするためだったと説明されることが多く、動物たちが順番を競ったという昔話も各地に伝えられています。ただし由来には諸説あり、はっきり確定しているわけではありません。
なお辰(竜)だけが実在しない生き物である点も、動物が後から当てられたことをうかがわせます。
方位と時刻にも使われていた
十二支は年だけでなく、方位と時刻を表すのにも使われてきました。これが現代の言葉のなかにも残っています。
子午線
方位では、北が「子」、南が「午」にあたります。この北(子)と南(午)を結ぶ線が子午線です。地図や天文の用語として今も使われています。
同じように、**東が「卯」、西が「酉」**で、この2つを結ぶ線は卯酉(ぼうゆう)線と呼ばれます。
正午・午前・午後
時刻では、1日を12等分して十二支を割り当てていました。午(うま)の刻がちょうど昼にあたり、その真ん中が正午です。そしてその前後が午前・午後になります。
毎日使っている「午前」「午後」という言葉に十二支の「午」が入っているのは、この時刻の呼び方が残っているためです。
深夜を指す「丑三つ時(うしみつどき)」も同じ体系で、丑の刻をさらに4つに分けた3番目という意味です。
自分の干支(十二支)の調べ方
十二支は生まれた西暦年から機械的に求められます。
計算式:(西暦年 − 4)÷ 12 の余り
余りが0なら子、1なら丑……と、上の表の順番で対応します。4を引くのは、十二支の始まりである子の年が西暦4年にあたるためです。
早見表も載せておきます。12年ごとに繰り返すので、自分の生まれ年から12ずつ足し引きすれば確認できます。
| 干支 | 生まれ年(例) |
|---|---|
| 子 | 1996年、2008年、2020年 |
| 丑 | 1997年、2009年、2021年 |
| 寅 | 1998年、2010年、2022年 |
| 卯 | 1999年、2011年、2023年 |
| 辰 | 2000年、2012年、2024年 |
| 巳 | 2001年、2013年、2025年 |
| 午 | 2002年、2014年、2026年 |
| 未 | 2003年、2015年、2027年 |
| 申 | 2004年、2016年、2028年 |
| 酉 | 2005年、2017年、2029年 |
| 戌 | 2006年、2018年、2030年 |
| 亥 | 2007年、2019年、2031年 |
年の変わり目に注意
上の計算は西暦の1月1日で年が切り替わる前提のものです。
暦の世界では、干支の切り替わりを立春(2月4日ごろ)とする数え方もあります。占いなどで使われるのは主にこちらで、1月や2月初旬生まれの人は、どちらの数え方かによって干支が変わることがあります。
一般的な会話や年賀状で使う干支は西暦年で構いませんが、暦注や占いの文脈では基準を確認してください。
まとめ
- 本来の「干支」は十干と十二支の組み合わせで、60通りある。ふだん干支と呼んでいるのは十二支の部分
- 十干と十二支は総当たりではなく、それぞれ独立に1つずつ進む。10と12の最小公倍数が60なので60年で一巡する(十干は6周・十二支は5周)。これが還暦の由来
- 掛け算なら120通りだが、実際に現れるのは60通りだけ。「甲丑」のような組み合わせは干支として存在しない
- 2026年の干支は丙午。前回は1966年、次は2086年
- 十干は五行(木・火・土・金・水)に兄(え)・弟(と)を組み合わせた10種類。「えと」という読み方もここから来ているとされる
- 契約書の「甲」「乙」や資格の甲種・乙種など、十干は順序を表す記号として現代にも残っている
- 十二支はもともと順序を表す記号で、動物は後から結び付けられたとされる
- 方位・時刻にも使われ、子午線(北の子と南の午)や正午・午前・午後(午の刻)に痕跡が残っている
- 十二支は「(西暦年 − 4)÷ 12 の余り」で求められる
生年月日を入力すると、満年齢・経過期間とあわせて十二支を確認できるぱぱっと年齢計算もご利用ください(表示されるのは西暦年から求めた十二支です)。
年齢の数え方については満年齢と数え年の違いでも触れています。数え年で祝う行事と干支は、どちらも暦の伝統に根ざした考え方です。
なお、十二支の動物の由来や立春を基準とする数え方には諸説があります。この記事は一般に広く伝えられている内容を整理したものです。