2019年度の資料を探していると、「平成31年度」と書かれたものと「令和元年度」と書かれたものが両方出てきます。同じ1年を指しているのに、呼び名が2つあるのです。

どちらかが間違っているわけではありません。どちらも正しく、依っているルールが違うだけです。順に整理していきます。

年度は4月1日から3月31日まで

まず前提の確認です。国の会計年度は法律で決められています。

国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。

── 財政法第11条

つまり2019年度は、2019年4月1日から2020年3月31日までです。年度は「西暦の1年」とも「元号の1年」ともずれた、独自の区切りだという点がここでのポイントになります。

2019年度の途中で元号が変わった

令和への改元は、元号を改める政令によって2019年5月1日から施行されました。年度が始まって1か月後です。

2019年度の1年間を元号で塗り分けると、次のようになります。

期間 元号
2019年4月1日〜4月30日 平成31年
2019年5月1日〜12月31日 令和元年
2020年1月1日〜3月31日 令和2年

1つの年度の中に3つの元号年が入っています。「この年度を和暦ひとことで何と呼ぶか」が決まらないのは、そもそもこういう構造だからです。

改元日そのものの決まり方については和暦・西暦変換のコツで政令の条文を引用して解説しています。

国の予算は「令和元年度」に統一された

改元にあたって、政府は年表示の扱いを事前に申し合わせていました。「新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議」による、平成31年4月1日付の申合せです。

このなかに、予算についての項目があります。

国の予算における会計年度の名称については、原則、改元日以降は、当年度全体を通じて「令和元年度」とし、これに伴い、当年度予算の名称は、各府省が改元日以降に作成する文書においては「令和元年度予算」と表示するものとする。

── 改元に伴う元号による年表示の取扱いについて(平成31年4月1日 関係省庁連絡会議申合せ)

大事なのは「当年度全体を通じて」という部分です。平成だった4月分だけを切り分けたりせず、2019年度という1年をまるごと「令和元年度」と呼ぶ、という整理になっています。

「平成31年度」の文書も有効

では、改元前に作られた「平成31年度予算」という文書はどうなるのでしょうか。同じ申合せに答えがあります。

各府省が作成した文書……において、「平成」……を用いて改元日以降の年を表示している場合であっても、当該表示は有効なものであり、改元のみを理由とした一括整理は行わないものとする。

書き直さない、という方針です。2019年度の予算は改元前の2019年3月に成立していたので、そのときの名称は「平成31年度予算」でした。それを改元を理由に作り直すことはせず、5月以降に新しく作る文書では「令和元年度予算」と表示する——こうして両方の呼び名が世の中に残りました。

そのため官公庁のウェブサイトでは、いまも「令和元年度(平成31年度)予算」のように併記されているページを見かけます。どちらか一方では、探している人が見つけられないからです。

それでも「平成31年度」が消えない理由

ここで注意したいのは、先ほどの申合せが定めているのは国の予算における会計年度の名称だという点です。世の中のあらゆる「年度」の呼び方を決めたものではありません。

年度を和暦で呼ぶときの一般的な数え方は、年度が始まる4月1日時点の元号を使うというものです。この数え方だと、2019年4月1日は平成31年なので「平成31年度」になります。

この基準が実務と合っていることは、過去の改元で確かめられます。

年度 年度の期間 年度の途中の改元 呼び名
1988年度 1988年4月1日〜1989年3月31日 1989年1月8日(平成) 昭和63年度
1989年度 1989年4月1日〜1990年3月31日 なし 平成元年度

1988年度は年度の途中で平成に変わっていますが、いまも「昭和63年度」と呼ばれています。財務省が公表している一般会計の統計表でも、1988年度は昭和63年度、1989年度は平成元年度として並んでいます。年度末時点の元号で呼んでいたら、1988年度が「平成元年度」になって1989年度と衝突してしまいます

2019年度に2つの呼び名があるのは、この一般的な数え方(平成31年度)に加えて、予算についての申合せ(令和元年度)が重なったからです。

「昭和64年度」という年度は残らなかった

もうひとつ、改元と年度の関係でつまずきやすいのが昭和64年度です。

昭和64年は、1989年1月1日から1月7日までの7日間しかありませんでした。年度は4月1日に始まりますから、この7日間は1988年度(=昭和63年度)の中に丸ごと含まれています。次の年度、つまり1989年度が始まる1989年4月1日には、元号はすでに平成です。

元号年 元号年の期間 その元号を冠した年度名
昭和64年 1989年1月1日〜1月7日 成立しない
平成元年 1989年1月8日〜12月31日 成立する(平成元年度=1989年度)
平成31年 2019年1月1日〜4月30日 成立する(平成31年度=2019年度)
令和元年 2019年5月1日〜12月31日 成立する(令和元年度=2019年度)

分かれ目は、その元号年が、同じ西暦年に始まる年度(4月1日〜翌年3月31日)と1日でも重なるかです。令和元年(2019年5月1日〜)は2019年度の中にすっぽり入りますが、昭和64年は1989年度が始まる4月1日より前、1月7日に終わってしまいました。

この表が示しているのは「その元号名を冠した年度名が成り立つか」であって、元号年の一日一日がどの年度に属するかとは別の話です。たとえば平成元年のうち1月8日〜3月31日は、年度としては1988年度(昭和63年度)に属します。

だから、確定した年度の名前として「昭和64年度」が使われることはありません。1989年1月〜3月の話をしたいなら、それは昭和63年度の第4四半期です。

それでも「昭和64年度」の資料は実在する

ここで注意が必要です。「昭和64年度」と書かれた当時の資料は、実際に存在します

1989年度の予算は、昭和が続くという前提のもと、1988年の秋から「昭和64年度予算」として編成が進められていました。国会会議録を検索すると、改元前の1988年11月〜1989年1月7日の審議のなかに「昭和六十四年度予算」という表現が見つかります(たとえば1988年12月21日の参議院・税制問題等に関する調査特別委員会など)。

その後、1989年1月8日の改元を経て、国会に提出された予算は「平成元年度予算」になりました。

構造としては、2019年度とまったく同じです。

年度 編成時の名称 確定後の名称
1989年度 昭和64年度予算 平成元年度予算
2019年度 平成31年度予算 令和元年度予算

違うのは、2019年度は編成時の名称(平成31年度)が年度の呼び名としても通用し続けているのに対し、1989年度は編成時の名称(昭和64年度)が年度の呼び名として残らなかったことです。昭和64年が年度の開始日に届かなかったためです。

古い資料で「昭和64年度」という表記を見かけたら、それは誤記ではなく改元前に作られた文書だと考えてください。指しているのは1989年度=平成元年度です。

まとめ

  • 年度は財政法第11条により4月1日から翌年3月31日まで。2019年度は2019年4月1日〜2020年3月31日
  • 令和への改元は2019年5月1日。2019年度の中には平成31年・令和元年・令和2年の3つの元号年が入る
  • 国の予算の会計年度名称は、政府の申合せで当年度全体を通じて「令和元年度」とされた
  • 改元前に作られた「平成31年度」の文書も有効で、書き直しは行われなかった。だから両方が残っている
  • 年度を和暦で呼ぶ一般的な数え方は年度開始日(4月1日)時点の元号。この基準では2019年度は平成31年度
  • 「昭和64年度」は年度の呼び名として残らなかった(昭和64年は7日間で、1989年度の開始日に届かない)。1989年度は平成元年度
  • ただし改元前に編成された「昭和64年度予算」の資料は実在する。古い資料の「昭和64年度」は誤記ではなく1989年度のこと

年度の期間・四半期・和暦の年度名はぱぱっと年度計算でぱぱっと調べられます。2019年度のように途中で改元があった年度には、改元日の注記が付きます(和暦の年度名は上記のとおり年度開始日の元号で表示するため「平成31年度」となります。「令和元年度」で調べても同じ2019年度にたどり着けます)。

和暦年度で「昭和64年度」を指定した場合は、対応する年度がないことと、1989年度が平成元年度であることを案内します。

元号そのものの変換はぱぱっと和暦西暦変換をご利用ください。

なお、本記事で扱ったのは国の会計年度の呼び名です。学校年度や企業の事業年度など、4月始まり以外の年度を採用している場合の呼び方は、それぞれの規程によります。