「年齢が1つ増えるのはいつ?」と聞かれたら、ほとんどの人は「誕生日の当日」と答えるはずです。実際、日常生活ではそれで何も困りません。
ところが法律の上では、年齢が増えるのは誕生日の前日です。7月10日生まれの人は、7月9日が終わる瞬間(=7月9日の24時)に1歳年を取っていることになります。
一見おかしなルールに思えますが、これにはきちんとした理屈があります。そして、このルールを知らないと説明できない身近な現象——4月1日生まれが早生まれになる理由——にもつながっています。
根拠になっている法律
年齢の数え方を定めているのは、明治35年(1902年)にできた「年齢計算ニ関スル法律」という、たった3項しかない法律です。
一 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
二 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
読み解くと、次の2つのことを言っています。
- 年齢は生まれた日から数え始める(生まれた日を1日目とする)
- 具体的な計算方法は民法143条に従う
ポイントは1つ目です。民法の期間計算には「初日は数えない」という原則(初日不算入)がありますが、年齢についてはこの法律がわざわざ「出生の日から起算する」と定めて、生まれた日を1日目として数えるようにしています。
「前日に増える」が導かれる仕組み
次に、計算方法を定めた民法143条を見てみます。
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。
キーワードは「応当する日の前日に満了する」です。
具体例で追ってみましょう。2000年7月10日生まれの人が25歳になるタイミングを考えます。
- 起算日:2000年7月10日(生まれた日=1日目)
- 25年後の応当日:2025年7月10日
- 期間が満了するのは、その前日である2025年7月9日の終了時
つまり 2025年7月9日の24時をもって「満25年」が経過し、25歳になる、という結論になります。誕生日当日の7月10日には、もう25歳になっているわけです。
直感とズレるのはなぜ?
生まれた日を1日目として数えているからです。
ここで注意したいのは、年齢は日数を積み上げて数えるのではないという点です。民法143条が「暦に従って計算する」と定めているとおり、カレンダー上の応当日(翌年の同じ月日)を基準に数えます。うるう年をはさめば1年の日数は366日になりますが、暦で数えるルールなので日数の違いは結果に影響しません。
そのうえで、生まれた日が1日目です。1年の区切りは応当日そのものではなく、その前日になります。生まれた日を1日目に含めて数え始めた以上、ちょうど1年分が埋まるのは応当日の1日手前だからです。日常の感覚では「誕生日が来たら年を取る」ですが、この数え方だと1年の満了は誕生日の前日になります。
「初日を数えるかどうか」で1日ずれる、という点では、契約書などの期間計算と同じ構造です(そちらは逆に初日を数えないのが原則です。詳しくは「初日不算入」とは?をご覧ください)。
4月1日生まれが早生まれになる理由
このルールが最もはっきり効いてくるのが、小学校の学年の分かれ目です。
学校教育法17条は、子どもが小学校に入る時期をこう定めています。
保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから……小学校……に就学させる義務を負う
そして学年の初めが4月1日であることは、学校教育法施行規則59条が定めています。
小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
この2つの条文に「年齢は誕生日の前日に増える」を当てはめると、次のようになります。
4月1日生まれの場合
- 満6歳に達するのは、誕生日の前日である3月31日
- その翌日は4月1日
- 「4月1日以後における最初の学年の初め」=その年の4月1日
- → 同じ年の4月に入学する
4月2日生まれの場合
- 満6歳に達するのは、誕生日の前日である4月1日
- その翌日は4月2日
- 「4月2日以後における最初の学年の初め」=翌年の4月1日
- → 1年後の4月に入学する
この結果、4月1日生まれは4月2日生まれより1学年早く入学することになります。「早生まれ」の範囲が1月1日〜4月1日で、4月2日からが次の学年になるのは、この計算から来ています。
もし年齢が誕生日当日に増えるルールだったら、4月1日生まれの子は満6歳に達するのが4月1日、その翌日の4月2日以後の最初の学年の初め=翌年4月1日となり、4月2日生まれと同じ学年になっていたはずです。たった1日の数え方の違いが、学年をまるごと1つ動かしているわけです。
自分や家族がこの計算でどの学年になるかは、ぱぱっと学年計算で確かめられます。小学校から大学までの入学・卒業の年月が和暦つきで出るので、履歴書の学歴欄を書くときにも使えます。
2月29日生まれはどうなる?
うるう年の2月29日に生まれた人は、平年には誕生日そのものがありません。この場合も同じ考え方で処理できます。
平年の場合、2月29日という応当日が存在しないので、民法143条2項のただし書きによりその月の末日(2月28日)に期間が満了します。つまり平年は2月28日の終了時、うるう年は2月28日の終了時(=2月29日に加齢)となり、いずれにしても年齢が増えないまま年を越すことはありません。
日常的な感覚で「平年は3月1日に年を取る」と説明されることも多く、これは「誕生日当日に加齢する」という一般的な数え方に合わせた表現です。どちらの説明も、平年の2月28日と3月1日の間で1歳増えるという点では一致しています。
日常生活ではどちらを使えばいい?
結論としては、日常生活では「誕生日当日に年を取る」で問題ありません。
法律上の「前日加齢」が効いてくるのは、次のような場面に限られます。
- 学年・就学時期の判定
- 年齢によって権利や義務が変わる制度の境界日(各制度ごとに個別のルールがある場合もあります)
- 保険・年金など、年齢を基準に取り扱いが変わる契約
こうした手続きで年齢が1日単位で問題になる場合は、必ずその制度の窓口や契約内容を確認してください。制度によっては独自の年齢定義を持っているものもあります。
まとめ
- 年齢は生まれた日を1日目として数える(年齢計算ニ関スル法律)
- 期間は日数ではなく暦で数え、応当日の前日に満了する(民法143条)ため、法律上は誕生日の前日に1歳増える
- この計算のおかげで、4月1日生まれは早生まれ(1学年上)になる(学校教育法17条・同法施行規則59条)
- 2月29日生まれも、平年は2月末日に満了する扱いで年齢が飛ぶことはない
- 日常生活では「誕生日当日に加齢」で差し支えない
満年齢や経過日数の計算はぱぱっと年齢計算でできます。このツールは日常の感覚に合わせて「誕生日当日に加齢する」方式で計算しているため、法律上の判定が必要な場面では前日加齢のルールに読み替えてご利用ください。